試論:「神の母」を140文字以内で

彼女は国の中でも開拓の村の職人の妻で、旅先で一人息子を出産したが、客人扱いしてくれる場所はなく、家畜小屋として使われていた洞穴での出産だった。三十数年後に息子は、歓呼の裡に都へ入ったが、数日後には同じ都で生贄の小羊のように屠殺され、彼女は母親として、その傍らで息子の死を見届けた。

【追記】

主の栄光に照らされ、主の天使から救い主の誕生を知らされ、天の大軍に圧倒された羊飼いたちは感激が冷めやらぬまま乳飲み子の居場所を探し当てた。彼女は事情を聞かされたが自分で主の栄光や主の天使や天の大軍の賛美を見ることはなかった。ただ彼女の産んだ子に比べれば、全ては比較にならなかった。