主にゼベダイの子らの母が息子たちを左右の座にと願った時、残りの十人の使徒は立腹した。これはしかし主が御受難を予告された直後であり、この「雷の子」である兄弟は決死の覚悟を主に伝えたい一心だった。ヨハネは御受難の折も主の傍らにあり、御受難の際に主から一時離れたヤコブも最後は殉教した。
使徒言行録12章でヤコブを殺害させた「ヘロデ王」ことヘロデ・アグリッパ一世は、ユダヤ人の歓心を買おうとしてキリスト信者たちに大弾圧を行った後、異邦人から露骨に追従され神のように扱われ、一神教信者ならば直ちに止めさせるべきところをそうせずに自己陶酔し、主の天使に打ち倒され頓死した。
福音書には主の職業はテクトーンとありホメロスの叙事詩ではテクトーンは船大工をも意味した。もしも主が腕の確かな職人として既に漁師の間で知られていたとすれば、故郷で生涯を終えることが多く同業者だけで集まりがちな漁師の中から、すぐ四人の信頼を得て弟子とすることができたのも、道理である。
ヨハネは大祭司が自分の存在を認識していた(ヨハネ18章15節)と記す。大祭司がガリラヤの漁師の息子をなぜ、認識していたのか? 理由として可能性が大きいのは、ヨハネの母が聖母の母アンナやエリサベトと同様、祭司族出身の女性だったためと推定され、母方が祭司族という点で、皆が遠縁だった。
(注)別エントリー「試論:『清めの水』を140文字以内で」も参照のこと。
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古代に遡ることができるある伝承は、十二使徒の中で、聖母に対する敬愛が特に強かった三人が、聖母の終生童貞に倣って終生童貞(独身)であったとする。それはヨハネと二人のヤコブで、ゼベダイの子らの母は聖母の「姉妹」(ヨハネ19章25節)であり、ヤコブの母も聖母の(義理の)「姉妹」だった。
(注)別エントリー「イエスの『兄弟』『姉妹』:同胞か親戚か」も参照のこと。
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福音書は主イエスの「兄弟姉妹」の存在を記すが、主は御受難の際、母を弟子ヨハネに託された。古代イスラエルでは師の死後その母の面倒を見るのは本来、弟子でなく遺族の責務である。ヨハネは自分の母を「母の姉妹」(ヨハネ19章25節)と記す。古代イスラエルで「兄弟姉妹」は親族全般を意味した。
聖母マリアの両親に関してカトリック教会の聖伝は、父がダビデ王家の末裔ヨヤキム、母はアロン族(祭司族)の娘アンナと教えてきた。古代のイスラエルでは、結婚相手は同じ部族または先祖が共通する同士が望ましいとされたが、大祭司アロンの妻はユダの族長ナフション(ダビデの先祖)の姉妹であった。
(注)別エントリー「試論:カナでの婚礼と聖母マリアを140文字以内で」も参照のこと。
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主は御受難の際、ヨハネに母を託された。このことで聖母には主以外に子がないとわかるが、ルツ記のように「近くの他人より遠くの親戚」の聖書世界では愛弟子というだけで師の母親を引き取るのは不自然で、ヨハネの母が「母の姉妹」(ヨハネ19章25節)つまり聖母の親族である蓋然性は否定できない。
主イエスは、ルカ9章の「主の変容」で三人の使徒に、「天上の体」(一コリント15章40節)すなわち死者の復活後の人間の姿(同章35節以下)をお示しになったが、当時三人の使徒は全く理解できなかった。「人の心に思い浮かびもしなかったことを、神は愛する者たちに準備された」(同2章9節)。
「主の変容」の後、主イエスは「人の子が死者の中から復活するまでは今見たことを誰にも話してはならない」と命じられた。使徒たちは「天上の体」(一コリント15章40節)を目撃したのだが、まず主の御復活前後の実体験を経た上で復活の意義を理解しなければ、「天上の体」の理解もないからである。
(注)別エントリー「試論:『人の子』を140文字以内で」も参照のこと。
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跡取りを産む前に夫に先立たれたルツは、申命記25章の規定に従って亡き夫マフロンの「兄弟」ボアズと再婚したが、このボアズはマフロンとは父も母も異なっていた。古代イスラエルにおける「兄弟」という概念が、父や母を同じくする同胞のみならず、広く親族全般を含んでいたことは、歴然としている。
ルツ記の主人公であるルツは、最初の夫マフロンとの間に跡取りを産む前に夫に先立たれ、のちに申命記25章の規定に従ってマフロンの「兄弟」ボアズと再婚したが、このボアズは亡夫マフロンとは父も母も異なっていた。マフロンの父はエリメレク、母はナオミで、ボアズの父はサルマ、母はラハブである。