試論:主イエスの職業テクトーンを140文字以内で

イエスやヨセフの職業は福音書でギリシア語でテクトーンと表現されるが、ホメロスの叙事詩ではこの語は建築や工芸全般また船大工とも関連した。福音書の時代、この職業に特に期待された役割は二輪馬車とりわけ車輪の製造・修理と考えられ、イザヤ44章13節はテクトーンの道具としてコンパスを記す。

(注)別エントリー「『イエスやヨセフは石切』ではない」も参照のこと。
http://josephology.me/app-def/S-102/wordpress/archives/67

(注)別エントリー「イエス・キリスト石切説が否定される理由」も参照のこと。
http://josephology.me/app-def/S-102/wordpress/archives/1355

(注)別エントリー「旧約時代の木造建築水準」も参照のこと。
http://josephology.me/app-def/S-102/wordpress/archives/2262

【追記】

イザヤ9章9節の記述からは、古代の中東において建築素材として一般的であったのは煉瓦や石であり、あくまでも木材はそれらに次ぐものでしかなかったことが窺える。古代において素材として可塑性の高さが際立っていた木材は、建築用としては高温の乾燥地帯では燃えやすいという致命的な弱点があった。

古代において車輪の発明は、これをもって「原始人」は「文明人」に移行したと評されるほど人間社会に大きな変革をもたらした。列王記下6章にある通り、一般人でも日曜大工的に木造建築技術をある程度は身に付けていたが、むしろ専門の木工職人の本領は、二輪馬車の車輪の修理において発揮されていた。

イエスとヨセフの職業として福音書に登場するギリシア語テクトーンは、トロイ戦争と後日談を扱ったホメロスの叙事詩では船の材木を準備する作業つまり船大工とも関連し、恐らく主イエスが内陸のナザレ育ちでありながら違和感なくガリラヤ湖の舟(船)の生活に対応できておられることとも符合している。

福音書には主の職業はテクトーンとあるが、ホメロスの叙事詩ではテクトーンは船大工をも意味し、もしも主が腕の確かな職人として既に漁師の間で知られていたとすれば、故郷で生涯を終えることが多く同業者だけで集まりがちな漁師の中からすぐ四人の信頼を得て弟子とすることができたのも、道理である。

(注)別エントリー「試論:天の国と『人間をとる漁』を140文字以内で」も参照のこと。
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